コーヒートーク

お嬢様は電子遊戯をかく語りき

ほっこりするインドネシア発のゲーム。喫茶店「コーヒートーク」をクリアしたの自分なりのレビュー。バリスタの正体はタイムトラベラー?

コーヒートーク

一杯のコーヒーから始まり、様々な人たちの出会いや別れを共に過ごす、ただそれだけの「コーヒートーク」。

コーヒートーク
コーヒートーク

カフェのバリスタ(barista)となり、お客様からの注文をこなしていく。コーヒー、抹茶、ココア、紅茶、ミルクの5種類のベースと、生姜、ミント、レモン、蜂蜜、シナモンを加えた一杯を提供し、親交を深めていく。

赤の他人で接点のない人たちが、他愛のない会話からドラマを生み出すが、我々プレイヤーはただ、見守るだけなのだ。

#バリスタ=バール(軽食喫茶店)でコーヒーを淹れる職業。バーテンダーは主にお酒を注ぐ人で、バリスタはノンアルコールのものを提供する人。必要な資格はないとされるが、JBA(日本バリスタ協会)、コーヒーマイスターなど取得している方がお店を開くことを目標にしている方は取得した方が良いとのこと

コーヒートーク
左がルア(OL)。右がフレイア(ライター)。

このゲームの特徴といえば、神話や伝承などオカルト要素で特に題材にされる亜人種が現実の人たちと変わらない生活を送っている。

画像にいるツノを生えたピンクの体色の彼女はサキュバスで、貿易会社に勤めるOL。日本などサブカルチャーに取り入れる場合は、元ネタが淫魔なためアダルト要素が備わったセクシーキャラとして描写されるのが当たり前になっている。

ファンタジーや平和な日常を描いた作品でも、エッチな女性悪魔としてが普通だが「コーヒートーク」では、恋愛事情に悩む1人の社会人と一風変わったシチュエーションで扱われている。

コーヒートーク
コーヒートーク_2021

製作したtoge productionsはインドネシアを拠点としてるデベロッパー(開発業者)。多民族国家として認識だが、スローガンに「多様性の中の統一」。民族、宗教、言語、肌の色、姿形が違うエルフやワーウルフ、オークがそうであるように違うからこそ認め合うことの大事さ。それがこの作品で人間以外の多種族が登場する理由。

政治指導者のマハトマ・ガンジーの言葉だそうだ。名前こそ知っている方だが、こういう形で再び耳にするとは思わなかった。

コーヒートーク
左がハイド(モデル)。右がガラ(医療事務員)

左の色白の男性は吸血鬼(バンパイア)であり、右の大柄な男性は狼男。頭にネジがハマった人造人間でもいれば「うるさい!」と怒鳴りたくなる物だが、ここは喫茶店であった。

吸血鬼だから、人の血を好むわけだが「訳あって飲まなくなった・飲まなくても割と平気」、「飲むが少量でバランス調整している」「別なもので補える」など、割と吸血しない要素を備えた人に危害を加えない吸血鬼は珍しくもない。それを現代風にアレンジした形なのが、ヴィーガン生活を送るという面白い解釈の仕方だ。

脱搾取主義(ヴィーガニズム)による動物への残酷な行為を排斥する考えを人間対人間に捉えている。ハイドが他の吸血鬼にも同じように考えるべきだという答えは発していない。そういう発言を軽々しくモノにしては「多様性の中の統一」が薄れてしまう。肉食系のオオカミ男と組み合わせているというのが、認め合うこそからの友情が強めなアピールのようにも受け止められた。

そんなガラは、医療関係に携わる見た目通りの胸板の厚いイケメンだ。その名の通り月夜の晩にはオオカミに変身してしまい、理性が効かずに暴れてしまうという悩みを抱えている。本人は穏やかで人助けを率先して動くほど優しい人物だが、それゆえにその本能をどうにかしたいと模索している。

そんな彼らにこの店で提供された一杯の飲み物により救われるという、感動がある。

コーヒートーク
コーヒートーク_2021

大人な雰囲気を醸し出すゲームなので、結構猥談な内容も飛び交う。サキュバスのルアが彼氏(エルフ)との関係で、両親と断絶やエルフの長寿というメリットを投げてまで自分と一緒になって良いのか?という悩みなどファンタジーだが「親が伝統を重んじる」をエルフに重ねていたりと、その独特な重さは決して他人事じゃない。

こういったキャラクターが日本にいないのか?といえばそういうわけではないが、会話の内容やキャラクターの造形はやはり海外ならではだなと参考・勉強になる。古き良きゲーム時代を大事にしているのか、ドット絵で表現されたスーパーファミコンで遊んでるような気分にもなる。インディーゲームはこういったもの古き良きを出してくるため、興味がそそられる。お財布に悪い人たちだ。

コーヒートーク
レイチェル(アイドル)

ワーウルフならぬワーキャットといったところか。日本風にいえばネコ娘、ウマ風にいえばウマ娘。

アイドルとして活躍している彼女が、芸能界や自身の仕事に対して口出ししてくる父親と仲違いしてしまう、年頃の女の子的なエピソード。自分はお金を稼いでる、社会人として自立もできるから子供扱いするな!というもので、その芸能関係に携わっていた父親は黒い噂が絶えない娘の身の回りを案じるが聞く耳持たない。と、他ジャンルならこういう話聞いたら何かアドバイス的なものを送りたいところだが、送るのは「暖かい飲み物」。それだけ。

このゲームの評価がものすごく低いとするなら、おそらくそれが原因でしょう。

話を聞いて、「今日は〇〇がいいかなぁ?」→「かしこまりました」→「うーん、やっぱこの味だねぇ・・・それでね、あの人がね!」と、この流れだけなのだ。

ノベライズに喫茶要素をプラスした形だが、バリスタである自分が何かアクションするなど全くないので他の人が日中に何をやっているか、どう過ごしているかなどは断片的に聞くしかない。スマホのSNSでフォローしているからそこから趣味や職業がわかるがそれだけだ。好きな飲み物が書いてるわけじゃない。

コーヒートーク
ニール(地球に交配もとい合コンしにきた)

はっきりとモノを選ばずに書くなら、何か派手な物語を期待するならハズレだし結果的につまらないと思う。よく、合間合間に新聞で情勢が語られるが意外とそれもキャラクターに関与するものが少ない。しかも割と殺伐とした内容のため、登場人物が不幸な目にあったりとか危惧するが特にない。(レイチェルが飲み物間違うとバッドエンドに行ってしまったりとかはある)

登場キャラクターが、こういうことあったんだよを「へぇ、そうなんだ」って返すシンプルなゲーム。だが、画像の宇宙服着た変な人(?)など、読み応えがあるシーンや、

コーヒーオーク
左がマートル(ゲームプログラマー)、右がアクア(CG開発)

蛮勇なるオークがIT関連の仕事をして、海棲人のマーメイドはインディーゲームを製作して出展するなど元ネタから大きくかけ離れた存在。(プレイ中マートルは男だと思ってた。胸は単純に鍛えた胸板だと思っていて、ジェンダー意識の中に失礼を働いた。)

自分もドラクエや漫画の影響か邪悪なもので豚の怪物のようなイメージで、トロルやオーガのような人間より一回り大きな巨人として描かれるため一緒くたになっている。また、漫画バスタードの剣と魔法の世界に登場するタイプは性欲も強く、無理矢理交配しようとするある種のベタキャラな印象も根強い。

ダンジョン飯など、話が通じるタイプもいて友好的な場合もあるので必ずしも悪という訳じゃない。

コーヒートーク
コーヒートーク_2021

相当大変だったと思われる最初に人間社会に溶けこもうとしたオークは、昨日までのエモノがパソコンに変わっているのだから苦労が伺える。マートルがゲーム関連の仕事に就けるほど、ITへの熱意は本物であり思えば、耐久力や持久力に関してはオークはその我慢強さは十分に活かせるものであると、決してインテリ系のオークというのはありえない話じゃない。

とはいえ、献身的に身を削いで働いても結果が得られないという不満が徐々に支配していき、そのかつての熱意も失われようとしているというのが語られる。たまたま店で知り合ったアクアが自作のゲームを発表することを手伝うことで何かを見出そうとする。割と現実的な悩みを抱えているのだ。

新聞でも、オークへの扱いがよくないらしく抗議している一面が掲載されている。なんとなくだが、「良作のゲームを制作したけどオークが作ったから、あまり評価はよくない」みたいな、正当な評価を得られずにいる人種差別(種族差別?)的なものが大きいんだろうか?

恋愛描写というものがないから断言はできないがLGBTの多様性も据えた同性愛も内包されているのかなという。アンダーテール内でもそういった描写があり、割とゲーム内でも見かけることが多くなったのかもしれない。

恋愛にとやかく言ったところで、止めやできないから関与などする気はない。自分はそういうスタンス。言葉が冷たいが「どうでもいい」好きにしなさいなのだ。

コーヒートーク
コーヒートーク_2021

なんだか、逆転裁判の証言台に立つ人みたいな感じだ。高さがそんな感じだし、全員があくのつよい人ばかり、特に冴えなさそうな警官や怪しい宇宙服着た人なんてまさに逆転裁判ならではだし。

コーヒートーク
コーヒートーク_2021

海外のゲーム・・だけじゃないのだが、ゲームのシステムをメタ的に現そうと仕込むことが見掛けられる。

アンダーテール内だったら、主人公がなぜ今いる状況をセーブできて、それを自由にロードできるのか?など、それは一種のタイムトラベルであり、絶望の未来を変えるために過去にやってきたタイムリープしてきたと捉えられるものもある。

なぜか、主人公はその世界を知っていてその登場人物が話すことも、これからすることを知っている。その人が好きなこと嫌いなことも知っている、結末もわかっている。二週目のプレイでスムーズにことが進むプレイヤーを訝しむが、登場人物には答えが出せない。

アンダーテール内だと、再びやり直すプレイヤーのせいで今までやっていたこともリセットされるため、やることなすことが無駄に終わるから努力しないという本人にとっては地獄のような心境を吐露するシーンがある。普通にファンタジーな話で終わる物語が、メタ要素を加えてガラリと様変わりする要素は、ホラーでもあり面白いところでもある。インディーゲームだからこそ「こだわり」を感じさせる。

コーヒートーク
コーヒートーク_2021

とりあえず、ノーマルエンド、グッドエンド(飲み物全正解)を見てゲーム終了。期待とは裏腹に楽しめましたし、何より好きなコーヒーを堪能できたのが何よりも嬉しい限り。

学生時代の自分なら絶対やらなかったゲームです。なぜなら理解力が0で派手なアクションばかりを求めてた自分には絶対合わず、そもそもインディーゲーム自体安っぽいゲームとして卑下してた可能性もあるから。高いゲームこそ至高であり完成品と盲目的に感じてたあの頃じゃ、到底味わえない世界だ。

珍しくこのページも5000文字以上と自分にしては書きすぎで、読み手からめんどくせーなぁって思う長さと思われます。が、それほど面白かったという証左です。

すごいおすすめ!って訳じゃないが、こう言ったほんわか、はんなりなゲームで過ごすのもいいかもしれません。プレイ時間は5時間もかからないでしょう。

日本のゲームや漫画などからインスパイア受けてそれが活かせているって聞くと嬉しいですね。そういえばスタッフさんが「VA-11 Hall-Aヴァルハラ」というゲームを参考にしていると記述があったので・・・

あとで絶対やる。

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