ふらっと、「謎の香りはパン屋から」を読んで

お腹が空きました、どうにも理由はこちらのようですね



パン屋さんの中で巻き起こるちょっとしたミステリー、クロワッサン、シナモンロール、チョココロネにカレーパン、ああ忙しなくお腹が鳴ります

謎の香りはパン屋からのプチ情報

大阪・豊中の小さなベーカリー〈ノスティモ〉を舞台に、大学一年のアルバイト、市倉小春様が、店員や常連客の間に漂う“日常の謎”を、その観察眼と推理でほどいてゆく連作短編ミステリーでございますの。全5編にエピローグを添えて、まるでアフタヌーンティーの三段トレイのように、さまざまな風味を楽しませてくださいます。
著者は土屋うさぎ様。漫画アシスタントからのご出身で、本作が小説家としてのデビュー作。そして装画を手掛けるのは『約束のネバーランド』で知られる出水ぽすか様ですの。2025年1月に宝島社より刊行され、第23回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞作として華々しく登場いたしました。そして発売からわずか一か月で十万部を突破――まるで“焼きたてのパンが瞬く間に売り切れる”かのような勢いでしてよ。
読みどころは、事件の派手さよりも人の心の襞(ひだ)に寄り添う繊細さ。そして各章の終わりには、パンにまつわるちょっとした豆知識が添えられ、後味はアールグレイのように柔らかく香りますの。
収録作は「焦げたクロワッサン」「夢見るフランスパン」「恋するシナモンロール」「さよならチョココロネ」「思い出のカレーパン」、そしてエピローグ。どれも口にすれば、甘みやほろ苦さが広がる短編集でございます。
“Tea to the English is really a picnic indoors.”――アリス・ウォーカーの言葉を借りますなら、この作品は“パンと共に開く室内ピクニック”のよう。紅茶片手に、ページをめくるたび、あなた様もきっと〈ノスティモ〉の常連になってしまわれますわ。
腹ペコ猪の淡々とした感想文

パン屋さんに行かれたことはございますでしょうか?
あの独特な雰囲気と広さ、スーパーマーケットとは違う空間。
立ち寄った時、そのお店ならではの商品がずらりと並び、同じカレーパンでもやはり作り手が違うと感触や味わいが変わる・・・ような気がします。
そんなパン屋さんとミステリーの組み合わせを書店でお見かけし、お腹と心を奪われ案の定一章一章終わる度に買い物に行きたくなる魔力を秘めております。
ですが、ミステリーと申しましても手荒なことや悍ましい人間関係などと言ったものはございません。非常に綺麗でかつ登場人物も好感持てる方々達と感じました。
私としましてはやはり、カレーパン!
・・・えっと、最終章に当たる思い出のカレーパン探しでの和気藹々とした流れが好みにこざいます。親友がそれぞれの道へ歩みを進めた後に、どこか寂しさを感じるなか別部署でアルバイトをしている紗都美様とのやりとり、レナ先輩の相も変わらない明るく元気な方と一緒に何かを成し遂げる姿にほっこりしますね。
とはいえ、主人公の小春様の一歩間違えたら人間関係がギクシャクとしてしまう可能性がある推理による指摘。一色触発となりかねないながらもそのお人柄により様々な方々と良い関係を気付けております。
その洞察力や彼女自身の弱みなど上手く散りばめられており、何気ない会話に驚くような秘密が隠されているなどこのミステリーパンは2度味わうことをおすすめしているのかもしれません。
はぁ・・・カレーパン、カレーパン、カレーパン!どこ!どこで売ってますか?行かなきゃ、本を読むのも大事だけど食べるのも大事です!


AIによるカレーパン雑学
まあ、カレーパンというものは、ただの揚げパンではございませんのよ。
その香ばしい衣の奥に秘められた物語は、まるで小説の一章のように、幾つもの説と歴史が重なり合っておりますの。
最も有名なのは、1927年(昭和2年)、東京・江東区のパン屋「名花堂」(現在のカトレア)で誕生したというお話。二代目店主・中田豊治様が、当時流行していた洋食のエッセンスを取り入れ、「具を包み、カツレツのように揚げる」という発想から生まれたとか。関東大震災の復興期、新しい食の楽しみを求める時代の風に乗った発明でございました。
けれど、それだけでは終わりませんの。他にも、東京・練馬のパン屋「デンマークブロート」が最初にカレーサンドを売り出し、その後“揚げる”という発想を得たという説。また、新宿中村屋の創業者・相馬愛蔵氏が、インドの革命家ラス・ビハリ・ボース氏から伝えられたカレーをヒントにパンへ包み込んだという浪漫めいた物語もございますのよ。
どの説が真実であれ、カレーパンは日本の洋食文化とパン文化が見事に融合した象徴であり、その魅力は海を越えて広まりました。いまやニューヨークやロサンゼルスのベーカリーでも“Japanese Curry Bread”と名を変えて並び、異国の人々をも虜にしているのですわ。
カレーが日本に伝わったのは明治時代、英国を経由してのこと。海軍が栄養食として採用し、やがて全国に広まったその味わいが、パンの柔らかな生地と出会い、油で揚げられて黄金色の衣をまとった――まるでシンプルな紅茶が、アフタヌーンティーで優雅なデザートと出会う瞬間のような、文化の化学反応でございます。
ですから、カレーパンを頬張る時、その香りと熱さの奥に、この国の歴史と職人の情熱が潜んでいることを、ほんの少し思い出していただけましたら、それはきっと一層美味しく感じられますわ。